V.花の中を見てみよう!(雌雄異株の不思議)

<2004.8.30作成>

まだまだある!雌雄の分かれている植物たち。

小笠原の花は小さいものが多いけど、綺麗で面白い!ルーペで詳しく観察してみよう。

ロングタイプ
Long tape(L):♀
ショートタイプ
Short tape(S):♂
ブロークンタイプ
Broken tape(B):♂
 ガラパゴスやハワイなどの海洋島には、雌雄異株の植物が多くあるそうです。小笠原の樹木も7割が雌雄異株であるといわれています。
もともとの祖先種が雌雄異株なものだけでなく、小笠原にたどり着いてから雌雄異株性を獲得した植物もあります。島に来て雌雄を獲得したオオバシマムラサキの花を見てみましょう。

 オオバシマムラサキの花は、花柱の長いロングタイプ(Lタイプ)と柱頭が奥に引っ込んでいるショートタイプ(Sタイプ)とめしべのないブロークンタイプ(Bタイプ)があります。
 上の写真を見てください。Lタイプは、健全なめしべとおしべの葯には花粉もどき(葯には見かけだけで機能しない花粉)が入っています。一見は両性花(りょうせいか:ひとつの花に健全なおしべとめしべがある)のように見えますが、機能としては雌花でLタイプの株は雌株ということになります。
Sタイプは、退化して機能しないめしべと花粉のある健全なおしべがあり、雄花の機能しかなくSタイプは雄株です。
  オオバシマムラサキ
 クマツヅラ科:小笠原固有種
 花期・5〜6月、写真は旭平から初寝浦遊歩までの夜明道路にて。
Bタイプは、健全なおしべしかありません(ときどきBタイプに混じって1、2個Sタイプの花が混じっているのを見たことがありますが、、、)。BタイプはSタイプと同じく雄花をつける雄株です。
 花粉もどきの役目は何でしょう。花粉もどきを取ると訪花昆虫は来ないのだそうです。雌花(雌株)は花粉もどきで昆虫をひきつけながら雄株から健全な花粉を貰っている巧妙な仕組みを持っています。このようなムラサキシキブ属の花の構造は、岐阜大の川窪信光教授によって明らかになりました。これは、本州のムラサキシキブ属にはない形態で、小笠原の環境下で三種に分化する前に雌雄異種性の形態に変わっていったとも考えられます。しかし、シマムラサキやウラジロコムラサキでは、LタイプとSタイプの2タイプしか見つかっていないようです。

  植物は昆虫との繋がりが深く、長い時間をかけて共進化(お互いの生命や繁殖に影響を及ぼしながら進化する現象。)してきました。特にランなどは特定の媒介者(ばいかいしゃ:花から花へ渡って受粉をする。主にハチや蛾や蝶などの訪花昆虫)がいます。花の構造を見ることは、媒介者の訪花昆虫を考えることにもつながっていきます。

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 雌雄異株の樹木には小笠原の象徴ともいうべき樹木になったキク科のワダンノキ、ミカン科のムニンゴシュユ、シロテツ属三種、トベラ科三種、モチノキ科、イチジク属、ムニンヒサカキ、ナガバキブシ、ムニンハナガサノキ、ハツバキ、シマムロなどなど、、、沢山あります。一度見てみると、不思議な花の世界に引き込まれてしまいます。


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 植物の世界では、被子植物の70%が雌雄同株植物(ひとつの花に健全なおしべとめしべの両方の性の器官をもった両性花の花をつける)、雌雄異株(しゆういしゅ:異なる個体ごとに雄花が咲く株、雌花が咲く株に分かれている)の植物は6%にすぎないといわれています。これに、トウモロコシのように同一の個体の違った場所に雄花と雌花の単性花がある雌雄同株植物も含めると実に90%!被子植物のほとんどが雌雄同株植物なのです。
では、海洋島の進化が見られる小笠原では、花の性はどうなっているのでしょうか。
ほんの一例を見てみましょう。

トキワサルトリイバラ(ユリ科) ムニンヒサカキ(ツバキ科) ムニンゴシュユ(ミカン科)
雌花をつける株
雌株
柱頭は3個、大きな子房が目立つ。 柱頭は3個、子房が目立つ。 大きな柱頭と子房が目立つ。
雄花をつける株
雄株
花粉の付いたおしべのみがある。 花粉の付いたおしべのみがある。 柱頭は見当たらない。