はてなの植物ファイル4

スベリヒユ属

(5月:父島)
 今回は、新しい帰化植物の話ではありません。
ある山頂に行った時、今まで見た事のない多肉植物に出会いました。スベリヒユの仲間です。

 小笠原のスベリヒユ科スベリヒユ属は、海岸から路傍に生えるスベリヒユと山頂や路傍の隙間に生えるヒメマツバボタン(帰化種・右下の写真)、花壇などに植えられるポーチュラカ(帰化種)の3種あります。
生育地からして山頂のガレ地に生えるヒメマツバボタンに近いのですが、花を見ると黄色。ヒメマツバボタンは紅紫色で異なります。

この植物は、ヒメマツバボタンより丸みがある葉です。葉は茎に密につき、基部には白い毛があります。葉は緑色。花は黄色。多年草。

ヒメマツバボタンは、葉の基部に毛があります。別名の”ケツメグサ”の”ケ”は、この毛に由来するものです。葉は「松葉」といわれるとおり、赤褐色を帯び線披針形をしています。花は紅紫色。

 小笠原植物図譜のリストには、ケツメグサ(Portulaca pilosa)の他にマルバケヅメグサ(Portulaca boninensis)という植物が帰化植物として載っています。名前の感じからいっても、もしかしたらこれかもしれません。
マルバケヅメグサは津山博士が固有種として発表したものだそうです。最新の生物リストにはマルバケヅメグサは帰化植物のヒメマツバボタンと一緒にまとめられています。
ですが、一見して同種とは思えません。
 (2005年6月:父島)  ヒメマツバボタン(ケツメグサ)の花

【追記:2005年7月19日】
【はてなの植物】
・生育地:山頂付近のガレ地
(父島の分布は、私は一ヶ所でしか確認していない。
そこには大小40株程度が生育している。)
・茎の長さ:10cm程
・葉の長さ:4〜6mm
・幅:3mm
・葉の形:倒披針形(最長幅は中部から先端の間)
先端は鈍頭からやや尖る
・毛の長さ:3〜4mm
・花弁は5枚で黄色
・雌ずいは柱頭が5裂する
・雄ずいは約16〜20本
【ヒメマツバボタン】
・生育地:海岸近くの砂地から山頂付近のガレ地
(父島の分布は広く、個体数もやや多い外来種)
・茎の長さ:10〜30cm程
・葉の長さ:5〜7mm
・幅:2mm
・葉の形:線状披針形(最長幅は中部から基部の間)
先端は鋭頭
・毛の長さ:7〜8mm
・花弁は5枚で紫紅色
・雌ずいは柱頭が5裂する
・雄ずいは25〜30本
(共通点)
・全体に水液に富む多肉質で地に伏し枝を伸ばすこと。
・葉には透かすと網膜が見える。
・葉の基部にはちぢれた白毛が束生する。
・葉は互生で、先端付近は輪生状につく。
・開花時間は、日中の数時間。(良く晴れた日の正午前後)

(相違点)
・分布の相違。
・花の色。
・雄しべの数。
・葉の形。
・毛の長さ、など。
【追記:2005年9月7日】
 その後、山本保々さんから元記載のコピーを頂きました。
昭和十四年一月発行の植物学雑誌(vol.LIII,No.625)には、確かにまるばけづめぐさ(新種)とありました。
当時の論文はラテン語で書かれています。
私は語学に縁のない人間なので、保々さんに少し翻訳して頂きました。
するとやはり黄色の花であったことが分りました。生育地もあっています。期待が高まります。

相変わらず観察も続けました。
9月になっても、岩石地はずっといるのが耐えられないほどの暑さです。
10時ごろ見に行くと、花はすでに閉じかかっているようです。花の咲く時間は朝に変わっているようでした。
 花を見ると、沖縄の固有種オキナワヒメマツバボタンにも酷似してます。雌ずい・雄ずいの形態に違いはないでしょうか。。。

 マルバケヅメグサと思われるこの花は、花弁5枚。雌ずいは1本で柱頭は5裂していて線形、反り返っている。雄ずいは花糸・葯ともに黄色、確認できるもので16〜20本程度ありそうです。種子は楕円形で0.5mm。黒色。いぼ状の凸点に覆われる。


観察の結果、花の色・葉の形を除いて雄ずい、雌ずい・束毛の特徴は、ヒメマツバボタンに似ている。
オキナワヒメマツバボタンの柱頭は、3裂していることで異なる結果となりました。
[琉球植物誌 初島(1971)]
 さく果  ふたが取れた後(中には種子がある)

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