NO.5 マルハチ
  
Cyathea mertensiana (Kunze) Copel.

固有種:ヘゴ科・ヘゴ属)


(2004年:父島南部) 茎にある葉柄痕
(丸の中に八の字が逆さまに見える)
 父島の中央部から南部にかけての湿った林内・林縁や沢沿いにかけて木生シダが多くみられます。また母島へでは多数のマルハチがうっそうと茂る森の樹冠から突き抜ける姿は南国的で美しいです。幹はときに10メートルを超え、森の中のタワーか巨大なオブジェのようです。

 マルハチは、名の由来にもなっている茎の表面にある葉柄の落ちたあとが特徴的です。漢字の八の字を逆さまにしてまるで悪戯書きのような面白い模様が目を引きます。茎は少し突起がありますが触れてもごわごわするだけでヘゴのような痛さはありません。

 父島にある木生シダは、広域分布種のヘゴと小笠原固有種のマルハチと小笠原固有種で父島にしか分布しないメヘゴがあります。
3種の違いついて観察に良いポイントはいくつかありますが、父島・旭山遊歩道入り口付近や中央山付近の車道や遊歩道入り口などが見やすいでしょう。
 頂芽をみると、鱗片とよばれる長い毛のようなものがごわごわと全体を覆っています。鱗片の形は不完全な袋状。淡茶色。中軸の鱗片の落ちたあとには刺が残ります。

葉は鮮線色、より成長した葉はより色合いが深くなります。大きいものは2m。葉柄は葉身より短く、長さ30〜70cm。基部は少し太さが増す。葉身は、倒卵状楕円形、2回羽状に深裂し、大きいもので130cm幅70cm。辺縁は波状片。

胞子嚢群は、主脈を挟んで一列ずつ並んでいます。胞子嚢床は円くて突出し、包膜はない。
頂芽は鱗片に包まれる(2004年:母島・乳房山)



胞子嚢群(ソーラス)(2004年10月:父島・中央山)
 茎の表面にある丸に逆さの八のような葉柄の痕は台湾などに分布するヒカゲヘゴにも共通しているそうですが、両者には他の形質などをみると非常に異なったもので、マルハチの近縁種はニューギニアにあると図鑑(日本の野生植物)に書いてありました。近縁種のシダはどんな姿をしているのでしょうか。一度見てみたいものです。



固有:シダ類の表紙にかえる