NO.38 ムニンヤツシロラン
Gastrodia boninensis Tuyama

固有種:ラン科・オニノヤガラ属)

 慌しい年末の島、山ではムニンヤツシロランという小笠原固有のランが咲きはじめます。

蘭といっても小さく(高さは8-10cm)、色は落ち葉に似ています。林床によほど目を凝らさないとなかなか見つかりません。
全株無毛の腐生植物で、こうしたヤツシロランの仲間は自らは光合成することはなく、地中に芋状の塊茎をつくってそこから根を伸ばして落ち葉に絡み付き必要な養分をとるのだそうです。本州にある仲間では、根は実が熟す頃にはなくなり、地上部は枯れて塊茎だけになって越冬するそうです。島の場合では、生活史は同様ではないかと思いますが、塊茎だけになる時期は冬ではなく夏のようです。
(2003年12月26日:写真は全て父島)
 蕾から花、果実、刮ハの開いた後の形、どれをとっても面白い変わった姿をしています。
大きな萼が閉じている蕾はカプセル、花はエイリアン、虫の顔、トンボ、、、いろんな顔(形)に見えてきませんか?

 果実の裂ける春頃、もう一度見に行って驚きました。すると同じ植物とは思えないほど背を伸ばしていました(高さ25-30cm程)。
果実はちょうどカタバミのように側面が裂けて、中に入っている綿のような種子が森の中を吹くわずかな風に乗って飛んでいきます。
風で種子を飛ばす風散布の植物です。

(2004年2月14日) (2004年4月7日)
ムニンヤツシロラン
 こうした植物は、目立たないために踏んでしまう危険が高い植物です。また、自生地の林床が踏まれて地面が極度に硬くなりすぎないことも大切ではないかと思います。

父島では毎年出てくる個体数は限られているものの、意外と広域に自生しています。

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