NO.9 オオハマギギョウ
Lobelia boninensis Koidz.

固有種:キキョウ科・ミゾカクシ属)

(2004年5月10日:東島)
 オオハマギキョウは、主に東島、母島とその属島に自生するキキョウ科の固有植物です。他の植物が生えないような海岸近くの崖や日当たりの良い草地に好んで生えます。
多年生草本ながら、見かけは木本のように太い茎があり、樹高も2〜3m程になります。
近縁は、ハワイ産のL..gaudiichaudii と考えられています。

調査のお手伝いとして東島に同行させてもらって初めて野生株にであった時は、日本の植物とは思えない壮大な姿にとても感動しました。父島ではヤギの食害で絶滅してしまい、すでに野生株は見られません。現在、亜熱帯農業センターや民家の庭先に見られるのは母島産のもので栽培されています。

茎の上部に細長い披針形の葉が何枚も輪生状に集まります。この姿から、島名ではセンマイバ(千枚葉)と呼びます。
葉は光沢があり革質、葉脈は裏面に突出し、ふちは裏側に葉を巻くものが多い。
葉が落ちると、茎には美しい鱗状の葉痕が残ります。

 花期は5月〜7月。
種から芽生えてから5〜6年で、一生で一度の花を咲かせます。
複総状花序を伸ばし、淡い緑色の線のある白い合弁花(花弁が合着している花。例:ツツジ )を、これまた葉の枚数に負けないばかりの多くの花を咲かせます。
雄しべは雌しべを取り巻くように一体につきます。

 果期は12月〜1月頃。
この頃になると全てのエネルギーを種子を作る為に費やし、葉はしおれて次第に枯れていきます。
種子はケシ粒のように小さく風によって散布されます。そして、再び良い条件の場所にたどり着いたものが芽生えていきます。
(2005年12月:父島・亜熱帯農業センター温室)
 風散布といってもそれ程遠くに種子が散布される事はない様で、東島の生育地は限られているのが印象的でした。今後はどのような分布の変化をしてくるのでしょうか。

 東島は1970年代はじめにヤギの駆除を行い、それから東島の植生は徐々に回復してきました。
現在は見事な東島のオオハマギキョウの群生ですが、以前にはオオハマギキョウの群生地としては認識されていなかったようです。いかにヤギの食害が凄まじいものか考えさせられます。
今、ヤギの全駆除が行われた媒島でもオオハマギキョウが回復しつつあると聞きます。父島でも、万が一にどこかで生き残っていたら、、、いつの日かオオハマギキョウ野生株の復活を喜ぶ日が来るでしょうか。海辺に立つ壮大な姿を見てみたいものです。しかし、ヤギがいる限り決して訪れることのない夢なのです。

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