NO.32 タイワンソクズ
 Sambucus chinensis Lindl. var. formosana (Nakai) H.Hara

スイカズラ科・ニワトコ属

(2008年7月:父島字長谷)

 タイワンソクズは、小笠原諸島、琉球、台湾に自生している多年草です。
小笠原諸島では、父島、弟島、母島、北硫黄島に分布しています。
父島では、湿潤な長谷付近に最も多い。夜明道路沿いに見られる植物です。

 花期は、6月中旬〜8月ごろ。
無数の白い小花に黄色い付属体が目を引きます。
この黄色い杯状の形をしているのは腺体(せんたい)といわれる部分です。
腺体は花外蜜腺(かがいみつせん)ともいい、昆虫を誘うために甘い蜜を出しています。

この日は、セイヨウミツバチ、アリ、ハエの仲間が訪れていました。
それを、花の間から数匹のアノールトカゲが狙っています。
しばらくセイヨウミツバチの様子を観察してみると、彼らは確実の腺体だけを狙って吸っているようでした。
腺体の蜜を吸うときにはセイヨウミツバチのお腹には花粉もつき、さらに花の上を歩いて移動したり隣の花序へと移ります。セイヨウミツバチだけでも着実に花の受粉をしているように思いました。
花と腺体 腺体の蜜を吸う
托葉の腺体
 タイワンソクズの樹高は2〜3m程。
根元の茎は太く木質化します。
茎の直径は、太いところで5〜7cm程。
茎には、縦に数本の溝があります。

葉柄は、10〜20cm程。
葉は対生し、奇数羽状複葉で20〜50cm程。
縁には波状の鋸歯(きょし:ギザギザ)があります。
茎と葉は無毛。
小葉は4〜6対。
主軸へとつながる小葉の柄はほとんどありません。
タイワンソクズの葉は、虫による食痕が著しい。

 托葉の縁や茎の分岐にも腺体が付くことがあります。
この茎には、蜜を求めてアリが来ていました。

果期は12〜1月ごろ。
花序は重そうに枝垂れ、果実は真っ赤に熟します。

葉や根を乾燥させたものは薬草になるそうです。
戦前には利用されていましたが、現在では使われていません。
(2004年12月:父島・長谷)



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