NO.36 トキワサルトリイバラ
(島名:ツグメ)
Smilax china L. var. yanagitani Honda

(サルトリイバラ科・シオデ属)

(2005年5月:父島・夜明道路沿い)
 夜明道路沿いの植物を見ると、他の木に寄りかかるようにして生えている葉の丸いつる植物があります。トキワサルトリイバラです。

小笠原(父・兄・母・向島)、伊豆七島に分布しています。

 本州に分布するサルトリイバラ(Smilax china)は、鋭い刺があることから「猿捕り茨(猿も捕らえられるの意)」と名付けられましたが、トキワサルトリイバラは、天敵がいない島へ来て刺がない種に進化したとも言われ、茎は滑らか。猿もヤギも捕れそうにありません。名のトキワは常緑樹の意。サルトリイバラが落葉樹なことから由来しています。
島名はツグメ。
 葉は全縁(ぎざぎざがない)で革質、緑色の綺麗な葉です。短い柄の根元から出る托葉は、2本の巻きひげになって近くの枝を掴みます。

トキワサルトリイバラの葉脈は、主脈の両側に2本の平行脈が走ります。
一見、双子葉植物にも見える葉をしていますが、こうした主脈に平行した脈は単子葉植物の仲間である特徴で、トキワサルトリイバラが単子葉植物であることが分ります。

 花期は1月〜3月頃、雌雄異株。
葉腋(葉柄の根元)から散形花序を伸ばし黄緑色の花を咲かせます。
花は、キキョウランと同じく6枚の花弁に見えますが、外側の3枚はがくが進化して花弁のようになったものです。

 トキワサルトリイバラは、こうしたユリ科の特徴を持ちユリ科に属していましたが、今、ユリ科は体系が変わり様々な科に分かれています。今回は暫定的ながらサルトリイバラ科にすることにしました。
(1月:父島・夜明道路沿い)
    雌花     雄花
 1cm強に大きくなった果実は、1年間近く枝に付いたままで、花の直前か同時くらいに熟します。

トキワサルトリイバラは、たくさんの花を咲かせますが、結実はとても少ない。
樹高の高い日当たりのいい場所では結実をしているのかもしれませんが、普段その実を見ることはなかなかありません。
(2009年3月:父島・夜明道路沿い)
 トキワサルトリイバラの実生です。

子葉は、円いハート形をしていて、葉脈が先端に向かっているという特徴があります。
茎は、親と同じように無毛で丈夫そうです。

実生が語る森の中の小さな声に、
耳を傾けてみませんか。
(2006年4月:父島・東平)

広分布:木本類の表紙にかえる