ツルワダン
Ixeris longirostra (Hayata) Nakai

固有種:キク科・タカサゴソウ属)

(2002年10月:父島・焼場海岸)
 ツルワダンは、海岸の崖や砂地、草地に生える多年草の固有種です。
絶滅危惧種TT類(VU)に指定されています。
草丈20〜40cm。岩場では小さな株に、土壌のいい草地では大きな株になります。
粉をふいたような白緑色の長細い葉で、葉質はやや肉厚で無毛。
輪生する葉はほぼ全縁(ぎざぎざがない)で葉先は鈍頭、花茎の途中にある葉は茎を抱いて尖り、場所によっては若干の鋸歯が入ったり波打ったりする。葉先はやや鋭頭。

ツルワダンは、まず一粒の種から芽が出ると輪生状に葉を出しロゼットをつくります。
ロゼットが大きく成長すると、次に花茎を伸ばしたり根元近くから左下の写真のようなほふくするつる状の茎を伸ばします。このつるの先に新しいロゼットをつくり、またつるが伸びていく様子がわかります。
ツルワダンの和名は、この特徴に由来するだろうと思いました。
輪生する基部の葉(右)、ランナー(左と上) 花茎の葉
 花期は暖かい時期を中心に1年中咲かせています。
頭状花序の総苞は反り返らず花弁に沿っています。
花が終わると、一度花を閉じてから数日すると綿毛を開きます。
種子は褐色。中心の幅が広く縦の溝が数本走り、先端は細く尖っています。
学名の‘longirostra‘は、「果実の先がくちばし状に長く尖る種」という意味なのだそうです。
(2006年5月:父島) (2006年5月:父島)
 一番上の写真を撮った焼場海岸は、かつて稀少種が自生していた事から現在(2006年)でも植物群落保護林に指定されています。
その海岸に2002年までは健在だった焼場海岸のツルワダンは、翌年の台風の影響で波が高かったせいか、今ではモクマオウの林下に生えるテッポウユリの姿しかみれなくなってしまいました。最近では、野生化したヤギは新たに分布を拡大していて、現在は焼場海岸に下り、その先の野羊山までもいくのではないかという状況です。

キク科はヤギ食害による被害がいちじるしい植物です。
父島では、ヤギのいない海岸の岩場や砂地などにわずかに生育するだけになっています。

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 [ひとくちメモ] ランナー・・・ほふくするシュート。
           シュート・・・芽が出て茎が伸びて葉が出る、、、全てを含んだ一本の枝や花序茎。
                   植物体は何本かのシュートと根からなる。
          

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