NO.35 アツバモチ
Ilex percoriacea Tuyama

固有種:モチノキ科・モチノキ属)

 アツバモチは、父島の乾性低木林の林縁から林内に生育している固有種です。
夜明道路沿いの旭平から夜明山へ向かうカーブ付近でも見ることができます。

アツバモチは現在、シマモチ(種内変異)として扱われ、小笠原植物図譜にも「シマモチの乾燥地型」と一文で紹介しています。
しかし、ムニンモチとシマモチの両種にも中間的な個体が多く、区別が非常に難しい植物です。

モチノキ属の分類は再検討の必要がありそうです。私としては、この図鑑にはあえてアツバモチとして載せておくことにしました。

アツバモチは、父島の旭平〜東平に分布しています。
樹高は、1m強。個体数は少ない。

葉は、非常に厚くかたく特徴的です。
鋸歯(ギザギザ)は、葉の先端近くに浅くある程度で目立ちません。
(2008年5月:父島・初寝浦遊歩道)
雄花(雄株の花) 雌花(雌株の花)
花は、2〜3月ごろ。
シマモチより、若干早めに咲き始めます。
雌雄異株。
雌花のほうが花数が少ない。
花が終わると、赤紫色の新しい葉を伸ばします。

果期は、1〜2月ごろ。
赤紫色に熟します。
果実(1月頃)

 父島にはムニンモチは分布しないとありますが、山頂〜稜線のやや湿った土壌の深い場所では葉が小型化し、ムニンモチのような木があるので、島内でも同定に混乱が生じています。
父島南部に行くと、今度はアツバモチのように厚いがもっと細長い葉の大木もでてきます。このように、小笠原諸島に広く分布しているこの種の葉の変化は、地域や環境でさまざまに変化しています。
アツバモチについては、この厚い葉が固定されたものなのか実際に種をまいてみる研究も必要かもしれません。

分類学者の方に、今後の分類の整理を期待したい植物です。

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