Z.希少種を守る保護柵
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保護柵で植物はここまで変わる!
日本全国で、シカやヤギなど大型草食獣による
植物や森林生態系の破壊が問題になっています。
それは、小笠原でも例外ではありません。
父島では、個体数が少なくなった絶滅危惧種(希少種)を守るために
いくつもの保護柵があります。まさにイタチごっこのようです。
でも、いったい保護柵でどの程度の効果があるのかは、
知りたくても、なかなか目にすることはないと思います。
しかも、なかなか一長一短には結果が出ないものです。
ですが、柵ができることで、葉はしっかりと確実に茂り、
もとの生命力を取り戻す姿は大変に感動的です。
ノヤギによる食害が植物に与える影響は甚大だということを
あらためて私たちに教えてくれます。
この保全の魅力的な世界を、ぜひ一緒に見てください。
・ウチダシクロキ A個体群の急激な減少
2003年のA個体群は、推定27〜28個体以上。
開花株13個体
結実株6株、結実数158個。
2007年のA個体群は、11個体(うち4個体は実生や幼樹で繁殖能力なし)。
開花株1個体
結実株1株、結実数1個。
2005年(柵設置前) | → | 2008年(柵設置から約2年後) |
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A個体群の中で一番開花結実する個体。 この株は、食害によって花が咲かない状態になりました。 当時、付近の繁殖個体が次々と枯れていった為、 一番繁殖能力のあるこの株を 迅速に囲うことが重要でした。 |
今年は、無数のつぼみがつくまでに回復しました。 結実と新しい実生に期待がかかります。 |
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枯れる危険性が高かった。 | 健全でしっかりとした葉が密に出ています。 | |
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下の方の葉が食べられていました。 | 健全でしっかりとした葉が密に出ています。 |
A個体群でも、全ての個体を囲えているわけではありません。
このような一箇所に多くの個体が集まっている貴重な場所では、
本来もっている繁殖能力や実生が出てくる環境づくり(もっと規模の大きい柵をつくること)が本当は望ましいでしょう。
ノヤギを排除できない状況下で、ウチダシクロキの受難はまだ続いているのです。
その他、気がついたこと。
設置後も管理する
保護柵ができると希少種が元気になりますが、
周囲の木々も目を見張るほど元気になり茂ってきます。
A個体群の柵でも、シマイスノキが予想以上に成長しました。
遷移が進んでいるのです。
柵ができたからといって決して安心という訳でなく、
設置後も希少種が埋没して枯れないように仮払いする事や
毎年3〜5株以上でてくる実生をなるべく枯らさず遺す努力など
これからも人間の管理の必要がありそうです。
東平は本当に豊かな森?
これは、東平にある小さな柵です。 2株のタコノキは、柵をつくる前には両方ともノヤギによって丸刈りでした。 柵は2株の間を通ることになり、明暗を分けてしまいました。 奥が柵の中のタコノキ、手前が柵の外にでたタコノキです。 これを見ると、一見静寂でノヤギの姿もなく豊かに見える東平の森林も、間違いなくノヤギ食害の脅威の渦中にあることが分かります。 ノヤギと人間の影響を排除して、初めて豊かな森林になるのかもしれません。 |