NO.56 ムニンノキ
     【別名:オオバクロテツ、島名:ヤマガキ】
  Planchonella boninensis (Nakai) Masam. et Yanagihara

    (固有種:アカテツ科・アカテツ属)

(2008年5月:父島・初寝浦遊歩道) 他の木と比べて黒っぽい葉と幹

 アカテツ属は、熱帯アジア・ミクロネシア・オーストラリア・ポリネシアなど南国に産する常緑樹です。
その中でムニンノキは、日本にあるアカテツ属の固有種としては唯一の貴重な植物です。
ムニンノキは、聟島、父島、兄島、母島列島の各島に分布しています。中でも父島での分布は北東部〜南部までと広く、個体数も他の島と比べてやや多いように感じます。夜明道路沿いにも時々見られる植物です。
絶滅危惧種TB類(EN)に指定されています。

樹高は、3〜6m程。
樹皮は独特な黒褐色をしているので、山の中でこの樹皮を見れば大概(9割がた)はムニンノキだと分かります。
葉は厚く、約10〜20cm程。表面には鈍い光沢があります。
らせん状に互生、枝先に集中します。
アカテツのような褐色の毛はなく、葉先は円いものが多いです。
葉の色は緑色ですが、すす病で次第に黒っぽくなります。
葉に厚みがあるため光に透けず、全体的に黒っぽく見える植物です。

ムニンノキは、アカテツ同様に葉には変異のある植物です。
アカテツより葉が大きく幅が広い特徴がありますが、稀にアカテツによく似た個体があります。
葉にアカテツ特有の褐色の毛がないことや、樹皮の色で区別することができます。


樹皮 枝先に花序がつく(雌株・つぼみ)

 花期は6月下旬〜7月頃。雌雄異株であると思われます。
花柄やがくには黒茶色の毛が密生します。
花はうつむき加減で、淡い黄緑色をした5枚の花弁を少しだけ開きます。

雄花は、5本の花糸の先に葯があります。
雌花には、花糸はありますが葯や花粉がありません。子房の上に5個に分かれた柱頭が目立ちます。
花数はアカテツと比べとても少ないです。
ひとつの枝に大体数個〜10個、多くても20個程度の場合が多いです。結実数は少ない。
一体どんな昆虫が受粉しているのでしょうか、、、。

雄花(雄株の花) 雌花(雌株の花)

ムニンノキというと、花はとても小さいが大きくなる果実に驚く植物です。
果実はムニンノキの小さい葉の大きさとそう変わりません。しっかり見ないと気がつかないようです。
果実は早春〜春にかけて黄色く熟し、おいしそうな果肉と柿に似た甘い香りがします。
島ではヤマガキと呼ばれ、食用になるといわれています。
いつも高い木の上のほうでなる果実の姿は、望遠レンズがないとなかなかいい写真が撮れません。

ムニンノキは、成木は見るのに幼樹はほとんど見かけません。
以前、ムニンノキの研究者の方にムニンノキの幼樹を調査の道すがら教えてもらったことがありました。
葉を数枚つけたムニンノキの幼樹は、アカテツの幼樹とそっくりでした。
若干の違いはとても素人目には見分けられません。
樹高1.5m(根ぎわ直径が数cm)くらいになってくるとムニンノキの特徴が現れ始め、ようやく私にも区別できます。


固有種:木本類の表紙にかえる