ガジュマルの脅威が進行中


 1月。小笠原の年明けは、船の汽笛が飛び交い花火を打ち上げてお祝いするカウントダウンのイベントがあります。うちの子供たちは起きていられないので、昼間の海開きへ行きました。(島民の)大人には寒くても子供たちは元気です。
1月は、小笠原が最も冷え込む時期です。でも、この寒さも山へ行くときには悪くありません。
夏場より水の量が少なくすむので荷物が軽く、楽に歩くことができます。

 旭山遊歩道は、集落から近く所要時間も2時間あればゆっくり散策できる、いい場所です。
ここは、林内から尾根や岩石地へと続き、多様な環境と植物を見ることができます。

 入り口から100mを過ぎた頃、ムニンヒメツバキに着生したガジュマルのこどもが大きくなっていました。

先日にも、西海岸へ行く途中で外来種のシマグワに(写真のガジュマルの)3〜5倍ほど大きく成長したガジュマルを見てきたばかりです。今にも絞め殺されそうでした。
「あのシマグワは、あと何年もつかな、、、。」と子供たちと話しました。
ムニンヒメツバキの幹に着生したガジュマル
 ガジュマルは、他の木を絞め殺し大木になる外来種です。
世界にはいろいろな植物が巧妙な戦術を持っていますが、その中でも、絞め殺すタイプの植物が最も強いと言われています。

小笠原には本来、花粉送粉者であるガジュマルコバチがいなかったので、人とガジュマルと在来種はうまく付き合ってきました。
ところが、戦後いつしかガジュマルコバチが入り込み、1992年にはガジュマルの種子繁殖が確認されるようになりました。
結実した果実は、鳥などが食べて各地へ運んでしまいました。
現在では、小笠原のどこへ行ってもガジュマルのこどもが出ている状態です。
東平の学術参考林でも同じような状況で、オガサワラボチョウジを筆頭に多くの植物に着生しています。

写真のガジュマルは、このくらいの大きさでも、根は枝より長く頑丈で大木をつかんで離しません。
遊歩道沿いにもいくつものガジュマルの実生や稚樹が在来種についていました。
「取ってもいいものかどうか、、、。」国立公園の小笠原では、よくよく考え始めると迷ってしまいます。
研究用のタグが付いていることもしばしばあります。
そうなると余計考えてしまいますが、雑草と一緒という気持ちで抜いてしまうこともあります。
特に、自然を守ろうという意識が強い子供たちは、「取らなきゃダメだよ!」と一生懸命です。
ガジュマルの大木は、子供たちにとっても遊び場になる友達のような存在ですが、島の植物がガジュマルばかりになるとすると話は大変なことだと解かっています。
大人の都合や考えなんてお構いなしですが、たぶん子供たちの方が正しいのです。
ガジュマルは、あと数十年で小笠原の大きな問題になっているに違いありません。

静かな林の中で、着実にガジュマルの脅威は進行しています。

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