NO.1 シマムロ
【島名:ヒデノキ】
Juniperus taxifolio Hook. et Arn.

固有種:ヒノキ科・ビャクシン属)

(2008年5月:父島・初寝浦遊歩道)

 

 シマムロは、聟島と父島列島と母島列島に分布する小笠原諸島で唯一の針葉樹です。
父島の旭山南峰や傘山の歩道沿いに多く、初寝浦遊歩道の休憩地付近にも立派なシマムロを見ることができます。この傘のある休憩地までは、初寝浦遊歩道入り口から徒歩30分ほどで到着します。
 
 シマムロは、樹高は20cm〜3m程。
兄島の風の強い岩石地では地面にはうようにしてさながらグランドカバーのようになり、風の当たらない乾性低木林内では直立して3m程の小高木になります。
シマムロは風の影響や環境に合わせて樹形を変えることができる植物です。

木はとても硬く、枯れても長い間腐ることなく残り、流木のような味のある材が残ります。
シマムロはヒデノキ(火出ノ木)と呼ばれ、材が焚きつけに利用されていたことに由来しています。
採取が盛んだったそうで、今も山を歩くと採取痕を見ることがあります。
現在では枯れ木の採取も禁止されています。

葉は3輪生(同じ位置から3つの葉がでる)の針形。若い枝には稜(かくばった部分)があります。
シマムロの学名は、イチイ科のイチイ(Taxus cuspidata Siebold et Zucc. )に似た葉を持つ種であることからつけられています。ネズやハイネズなどビャクシン属の仲間は似たような葉や球果をしています。

雄花と葉(2005年12月31日) 樹皮



花期は、1月〜4月ごろ。
雌雄異株。

シマムロの花は、雄花のほうが大きく目立ちます。雌花はこれかな?というくらい小さなものです。図鑑にも載っていないので、正確にはたぶんこれではないかと今のところ考えています。(違っていたらお知らせいただければ幸いです。)
雌花をよく見ると3個の丸い突起があります。これが胚珠(はいしゅ:種子になる部分)のようです。


針葉樹の花の受粉は、風が吹いたときに雄花の花粉を雌花まで届けてもらう風散布です。
こんなに雌花が小さく蜜もないので、蜂が雄花に来ることはあっても、雌花に来る用事はなさそうですね。

雄花(雄株の花) 雌花(雌株の花)
 果期は、12月〜4月ごろ。
受粉してから1年かけてあずき色に熟します。

海洋島の小笠原諸島に到着したシマムロの祖先種は、この球果を鳥に食べられて運良く運ばれたのではないかと考えられています。
果実(2005年3月:父島・初寝浦遊歩道)

固有種:木本類の表紙にかえる