NO.23 チチジマキイチゴ
Rubus nakaii Tuyama

固有種:バラ科・キイチゴ属)

(2008年5月:父島・長谷、ヤロード橋) (2002年3月:父島・北袋沢)

 チチジマキイチゴは、父島にしかない貴重な固有植物です。
絶滅危惧種TA類(CR)で、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものに分類されている植物です。

父島の長谷のヤロード橋近くで、夜明道路の車道から見ることができます。

 樹高1〜1.5m程。

 花期は、主に4〜5月頃。
花は純白の花弁で、5弁や八重咲きになるものがあります。
やや下向きかげんに咲く、清楚な花です。

 果実は、残念なことにまだ見たことがありません。
資料には、「果実は球形で6〜7月赤熟する。」とあります。

チチジマキイチゴには、茎にとげがありません。
葉は3〜5中裂掌状、基部は心形で、互生(ごせい:茎の節にひとつの葉がつく)します。
ハチジョウクサイチゴには鋭いとげがあり、葉は3中裂〜浅裂掌状になる点で異なります。

花と葉
 チチジマキイチゴの生育地は、沢沿いや山の稜線の林内で、その多くは私有地内や道路沿いにあります。

その為、今までにも道路整備や土地開発で減少することがありました。小笠原では珍しく開発で減少しやすい植物で、保護には土地所有者の理解や協力が必要不可欠です。

また、野生化したヤギによる食害も深刻です。

2003年か20004年頃には、長谷のチチジマキイチゴの群落が集中的にヤギに狙われて、柵で囲われた農地以外はほぼ全滅しました。食害に気がついてから3ヶ月か半年くらいの出来事でした。
今では、オオバナセンダングサやタイワンソクズなどが茂っています。(左の写真)
(2008年5月:父島・長谷)

 長谷のチチジマキイチゴの壊滅は、「あれほどたくさんあった勢いのある群落が、ヤギの食害によっていとも簡単に失うものなのか、、、。」と気がつかれた方も多かったのではないでしょうか。私もその中の一人でした。
今でも「あの時、自分に何かできなかったのか、、、。」と悔いの残る絶滅危惧種です。

                【 絶滅危惧種をヤギの食害から守る為に必要なこと 】

                      @食害に気がつくこと

                      A保護柵の設置を「早く」行うこと


【参考文献】

小笠原諸島自然環境現況調査報告書(昭和50年8月3日)


固有種:木本類の表紙にかえる