キフゲットウ
.Alpinia zerumbet “Variegata”

(ショウガ科)

(2008年6月:父島字小曲 亜熱帯農業センター)
 小笠原諸島にゲットウの仲間は2種あります。
よく知られているハナソウカ(ゲットウ)と、もうひとつはキフゲットウです。
キフゲットウは、葉に黄色の斑がはいる園芸品種です。
小笠原のものは、実生での更新を繰り返すうちに斑がはっきりしなくなっているようです。
黄色い斑の模様は、出始めの若い葉にはよく現れますが、成長するにしたがって薄れてしまいゲットウとそう変わらない緑色の葉になります。

 花期は5〜7月ごろ総状花序を伸ばします。
ゲットウやキフゲットウの総状花序は、中心の太い花軸から細い柄に分かれ、ボート形の大きな苞(ほう)があります。この苞の中には、2〜3個のつぼみが隠れていて、順次咲いていきます。

キフゲットウの花は、ゲットウの花より花径が約1cm小さく小ぶりな印象です。花数はゲットウよりも多く感じます。
花はゲットウと比べ白色が強く、花弁の先端の桃色が弱い。若い花軸(花序の中心の茎)は鮮やかな珊瑚色をしています。
キフゲットウは、花の白、黄、桃色と軸の珊瑚色と葉の模様のコントラストが大変美しい植物です。

 果期は11〜12月ごろ。赤い果実は縦方向に裂け、香りのある種子をはじき出します。
花(2008年6月:父島・大神山公園) 果実(2005年12月:父島・大神山公園)
 キフゲットウは、父島の三日月山周辺、大神山公園から清瀬、扇浦から小曲、長谷から中央山付近に分布しています。
日頃見慣れている”ゲットウ”は、このキフゲットウであることが多いでしょう。

 一方の父島のゲットウは、戦前からの私有地である山の中や海岸付近に植えられたものが今も残っています。
この分布の違いから、キフゲットウは戦後導入されたものと思われます。

 繁殖方法にも違いが見られます。
栄養繁殖のほかに、キフゲットウは結実による実生繁殖を盛んに行いますが(写真左:のり面に生えてきたキフゲットウ)、父島のゲットウについて観察したところ、今のところ結実がありません。母島では、玉川ダム付近でいくつか実っていたのを見たことがあります。その時は、6群落程度を見たうちの1群落の数個の結実ですから、母島でもゲットウの結実は少ないようでした。
(2008年6月:父島字清瀬 行文線)
 夜明道路沿いに芽生えたキフゲットウです。

新しい葉には斑が多く入りますが、成長するにしたがって斑は消滅してしまいます。

小笠原のキフゲットウは、園芸品種として売られているキフゲットウの花房の大きさや斑の入り具合などの特徴と異なる部分があります。

これは、実生での更新を繰り返すうちに祖先種に戻りつつあるのか、または他種との雑種を形成しているのか、どちらかの可能性があります。
キフゲットウとハナソウカ(ゲットウ)の区別点
<キフゲットウ> <ゲットウ>
【 葉 】 黄色の斑が入る。
       (小笠原では若い葉にだけ斑が入る。)
【 葉 】 緑色。
【 花柄 】 珊瑚色〜淡黄色。太さ約0.5〜0.8cm。
   毛は細かい毛があるか、花柄の節に少しある程度。
         (写真1)

       咲き終わった後の花軸はまっすぐ。(写真5)
【 花柄 】 赤褐色〜淡黄褐色。太さ約1cm。
        毛は花軸と花柄の全体にある。
         (写真2)

        咲き終わった後の花軸は曲がる。(写真6)
【 花序と花 】 花序の長さ約15〜30cm。
           花軸から分かれた花柄は約2.5cmと長い。
花柄の本数が大きいもので55本程度と多い。(花数多)
           苞の長さ約2.5cmと小さい。
           花径約3〜3.5cmと小ぶり。
           花弁の長さ約4cm。
            (写真3)
【 花序と花 】 花序の長さ約25〜30cm。
         花軸から分かれた花柄は約1cm未満と短い。
花柄の本数が大きいものでも45本程度と少ない。(花数少)

           苞の長さ約4cmと大きい。
           花径約4〜4.5cmと少し大きい。
           花弁の長さ約5cm。
            (写真4)
【 果実 】 未熟〜熟すまで果実には毛がない。 【 果実 】 早落性の毛で、未熟の頃に毛がある。
         熟す頃には毛がなくなる。

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