ムニンビャクダンの結実・続報

(6月歳時記)ムニンビャクダン実りの年
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 まず、ムニンビャクダンとはどんな植物だったか思い出してもらうために、少しお話しましょう。
ムニンビャクダンは、ビャクダン科の植物で世界に8種しかない貴重な南方の香料植物です。世界では広く利用され、野生株が絶滅に瀕しているところもあるようですが、ムニンビャクダンは芳香が少なく利用されずに現在に至ります。

それでも弱い固有植物です。
古い文献などを読んでも、生育地が現在はなくなっている場所がある事から減少傾向であることが分ります。
寄生植物で根茎での栄養繁殖をします。木と木は繋がっていると考えられるので、正直どこまでが一株なのか分っていません。また、果実のなる木はほとんどありません。
私の考えだけですが、自家受粉では結実しないといわれる事から、個体群の安定したところの木が実るのかもしれないと感じています。
果実が野生状態でなることはここ数年の観察で分りましたが、夏は仕事に、家庭にと夫婦共に忙しい季節、実が何色に熟すのか見たことがありませんでした。

ムニンビャクダンは、今まで大きな研究のされていない植物です。
ムニンビャクダンの熟した実のカラー写真は世にでていません。
自分でいつかは見てみたいと思っていました。今年は6月にはたくさんなってので、期待も高まります。

 8月26日、ようやく時間ができて見に行くことが出来ました。
ところが、あったはずの果実がありません。この木も、あの木も、、、あれ?!
落ちてはないかと地面を見ると、中の種子が空っぽになった実がいくつも転がっています。
こうした残骸は、クマネズミの食害です。大変ショックでした。
熟す前に食べられたのでしょう、食害された実はどれも小さいままでした。
(クマネズミに食害されたムニンビャクダンの実)
(写真は2005年8月26日)
 それから探して探して、ようやく3個の果実を見つけました。

上の果実は、まだ未熟です。左の写真の果実は、色も濃く完熟しています。大きさは、縦:1.5cm、横幅:1.2cmありました。
「すもも色」という表現がぴったりするような、すももが熟した色そっくりの赤紫色で、何とも美味しそうな色でした。



 今年のムニンビャクダンの実は、残念ながら”豊作”にはならず終わってしまいました。それでも、初めて熟した果実を目にして、驚きのような大感激がありました。

ムニンビャクダンのことを何も知らなければ、きっと目の前のひとつの果実に何の感動もなかったでしょう。知れば知るほど、植物の世界は奥深く、身近な植物にいろんな感動や驚きを教えてくれます。

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