NO.55 マルバタイミンタチバナ
Myrsine maximowiczii (Koidz.) E.Walker
(固有種:ヤブコウジ科・ツルマンリョウ属)
マルバタイミンタチバナは、父島、兄島に分布している小笠原固有の樹木です。個体数は少ない。 絶滅危惧種TA類(CR)※1に指定されています。 マルバタイミンタチバナは、日当たりのよい樹高0.5〜1.5mのわい性低木林の林縁から低木林内に生育します。 シマタイミンタチバナでも、時に葉が小ぶりになることがあり、マルバタイミンタチバナによく似た姿になります。 父島のマルバタイミンタチバナの株は小ぶりで貧弱なものが多いのですが、兄島では1m程の見事な樹形になり美しい姿をしています。 葉は丸みがあり、先端は凹む事があります。 葉脈は、中央の主脈しか目立ちません。 一番の特徴は葉柄が赤紫色なるところです。 新葉は淡褐色で、2〜3月の花の咲く前に出します。 |
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(2004年4月:兄島) | |
葉(兄島) | 葉(父島) |
上の写真は兄島と父島の葉の様子です。 兄島のほうが圧倒的に良好です。 父島では、何らかの要因で環境に合わなくなってきているのかもしれません。 マルバタイミンタチバナについては、外来動物以外の減少要因を模索する必要がありそうです。 父島では、ヤギの食害や幼虫(右上の写真)による食害が多少ありますが、これが原因で枯れたという個体はありませんでした。 周囲の木があまりにも勢いよく育ちすぎているのでしょうか、、、。 日陰になると花が咲かなくなり、高密度に埋もれてしまうと弱くなってしまう印象があります。 今までにも他の樹種との競合に負けて枯れた個体を見たことがありますが、これが原因と結論付けるには数年をかけて本格的に調査しなければいけません。 |
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花期は、3〜4月ごろ。 雌雄異株。 前年の枝に短い花梗を伸ばし、1〜8花を束生します。 がく被片は4〜5裂に深裂します。 花は、雄株の方が目立ちます。 マルバタイミンタチバナの花は、シマタイミンタチバナの花より小型の花ですが、基本的な花のつくりはシマタイミンタチバナと同様のようです。 |
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雄花(2005年3月) | |
雄花(雄株の花) | 雌花(雌株の花) |
果期は、1〜3月ごろ。暗紫色に熟します。結実数は少ない。 マルバタイミンタチバナの一番の問題は、父島にある個体のほとんどは老木で、次世代が育っていないことです。 絶滅危惧種を守る為には、何が必要でしょうか。 一番怖いのは、誰も気がつかない間に絶滅寸前になったり、絶滅したりすることです。 絶滅危惧種を絶滅の縁から救う為には、絶滅寸前になってからよりも、ある程度個体数があるうちにその植物の研究を進めておく必要があります。 個体数の把握、雌雄の個体間距離、送粉昆虫の解明、実生から成長段階の個体の有無など、なるべく多くの生態を明らかにしておく事が、将来の保護対策に必ず役立つはずです。 このマルバタイミンタチバナをはじめ、小笠原の絶滅危惧植物を研究する研究者はまだまだ少なく、多くの絶滅危惧種の生態は明らかにならないまま残されています。 |
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果実(2005年2月) | |
※1・・・絶滅危惧種TA類(CR):ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種。 |