小笠原のカリバチ1




 父島の海岸を歩いていると一見スズメバチに似たハチを見かけます。
これはドロバチの仲間でオオフタオビドロバチというハチです。
名前は、お尻のほうに2本の帯があることに由来しています。

本州にも普通にいる種で、小笠原には移入してきたと考えれていますが、いつ頃なのかよくわかっていません。

 本種は単独性のハチで、雌だけが狩りをします。
これは、本種の幼虫が蛾の幼虫などを食べて育つ為です。
巣はカミキリなどの脱出口や竹筒などに作り、幼虫に必要な分の蛾の幼虫などを集めてきたらドロなどで壁を作りい1匹に付き1室を設けます。
母バチは主に、蛾のなかでツトガ科のノメイガ亜科の幼虫を狩り、小笠原では特に海岸に生えるハマゴウの葉を利用するマエモンノメイガの幼虫を狙います。
ノメイガ亜科の幼虫は葉を糸で綴じて中に潜むものが多く、天敵からの捕食を避ける戦略をとっていますが、このドロバチは頭部にあるオオアゴで葉を噛みびっくりして飛び出してきたところを捕まえ、お尻にある針で麻酔をして巣に持ちかえり、生きたまま幼虫の餌にします。

このような生態なので、本州などでは農業害虫の天敵として重宝されてきましたが、近年は開発などで減ってきているようです。
小笠原でも近年減少しているらしく、アノールトカゲに捕食されてるのではという声もあります。

たしかにアノールのいない兄島などでは良く見かけるようです。
父島でも南部にいくほど多く見かけ、オガサワラトカゲもよくいる環境なので、その可能性も否定できないと思います。
さらに、1990年ころからチャイロネッタイスズバチというカリバチの仲間が父島で定着しはじめ、生息地を追いやられた可能性もあります。
オオフタオビドロバチが多くみられる環境では、チャイロネッタイスズバチを見かけることはありません。


マエモンノメイガの幼虫を見つけとまる
上から葉を噛み幼虫を出るのを誘う
上からやっても出てこないので下側を噛む
びっくりして出てきた幼虫をオオアゴと脚でつかむ


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