3〜4月・歳時記

テリハコブガシの頂芽(4月1日:父島・中央山北峰)
 3月は、うららかに晴れた穏やかな天気と長雨で山に雲霧がかかる天気が交互に訪れました。
小笠原の春を感じさせる植物にテリハコブガシの頂芽(茎のてっぺんにある芽)があります。
例年、この時期にはテリハコブガシの落葉と角のような頂芽の膨らみがみられ、小笠原のタブノキ属の中でこれほど落葉と頂芽が目立つものはありません。今は、木の下の方にある枝で新葉の展開がはじまり、株によってはこれから開花しようというところです。

新緑にあふれるこの季節は、昆虫や動物も活発に動く季節でもあります。
今年もギンネムのそばに行くと、ギンネムキジラミが舞っています。ギンネムキジラミは名前のイメージとは違いセミの仲間のようで、ルーペや虫眼鏡で見てみると目が大きくて愛嬌のある顔をしています。
一方、秋から続いたウラナミシジミの大発生はイソフジの花が終わる2月半ばまでで、3月半ばには姿を消していました。次はどこへ飛んでいくのかな・・・。

東平の怪事件(!?)、3月には何故か何本ものムニンヒメツバキが途中からへし折られていました。
食害などはなくどれも太い木ばかりなので、ヤギのような動物というよりは人間のような強い力で折った事がうかがえます。ムニンヒメツバキ自体が危惧種でもないので大きな問題にはなりませんが、かなり不自然で乱暴なやり方に山を歩く人の間で話題になりました。
この時期は、東平の林内に度々ヤギが群れをなす時期でもあります。花や木々の香りより雄ヤギ独特の体臭が香ってくる事が多くなります。写真が撮れたのは警戒心の薄い若いヤギでしたが、島の中でも屈指の立派な雄ヤギが数頭ずつ移動しながら食事をしています。
昨年から続いていたヤギの食害調査が終わりその後の様子は分らないけれど、1年で場所によって半数近くのオオミトベラが枯れたことを考えると、今年もオガサワラモクレイシ・シマギョクシンカをはじめ、危惧種のオオミトベラが今年も食害にあって枯れるのでしょう。
ヤギによる食害や何者かに折られた木々で、東平の森林は荒れています。
東平の雄ヤギ(3月17日) 樹高3mのムニンヒメツバキが折られる(3月17日)

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