東平の現状

〜 父島では、どこへ行ってもヤギの姿があり食害が目立ちます。東平も例外ではありません。
特に、春には複数の群れがわがもの顔で通り、固有植物への大きなダメージを与えています。

小笠原の自然は美しく綺麗ですが、その裏側では静かに貴重な植物相の破壊が進行しています。
絶滅危惧種や外来生物については、今後「植物の不思議」で特集したいと思っていますが
ここでは、東平の植物たちが今どんな様子なのか、
ヤギの食害がどう影響するのかを、ざっとなりともみなさんに知っていただければ幸いです。 〜

  【1】オオミトベラ

 左は、東平の旧道から見えるオオミトベラの写真です。
樹高は2m程。オオミトベラの中では大きな株で、今まで大きな食害はなく今年2月までは青々とした葉をびっしりとつけていました。例年よく開花し、今年も楽しみにしていたのですが、、、春頃には、無残にも枝の途中からへし折られてしまいました。

枝は、何度も何度も下に向かって折れ、かなり強い力が加わったことが分ります。
これだけ大きな枝が、林内を吹く風などでは折れません。近くに倒木もなく、下向きに強く引っ張られたような折れ方は、ヤギが上部の葉を食べるためにみられる光景です。→拡大写真

  オオミトベラは、小笠原の固有植物で絶滅危惧種に指定されています。オオミトベラ図鑑説明へ
現在の個体数から考えて直ちに絶滅するような植物ではありませんが、開花結実する個体が少ないオオミトベラがさらにヤギの食害を受けた影響で、今後の次世代への健全な更新ができなくなる危険性があります。

 小笠原は、海洋島で特に大きな動物がいなかった為、小笠原の固有植物は外敵に非常に弱い性質があります。ヤギの食害が、直ちに脅威になることを強く実感しました。
(2005年7月11日:父島・東平)


(2005年1月:父島・東平)
 他のオオミトベラの写真です。樹高は1m程。
上の写真と左の写真の3枚は、背景が重なる事からも同じ個体であることが分ると思います。

上の2枚の写真は、1月に撮影したものです。
葉もあり問題なさそうですが、、、
幹を見ると、上部が折れています。葉も、新芽と下部につく葉では大きさがかなり違います。これは、下の方につく大きな葉が本来ついていた葉で、上部の枝がなくなったことで脇から新しい芽を出してきたものです。
自分なりには、大きくなりつつある新葉に希望を持ちつつ、「頑張って!」とエールを送り撮った写真です。

7月になってもう一度見た時には、、、残念ながら、すでに枯れていました。(左の写真)
背景は全く変わりませんが、オオミトベラだけがあまりにも変わり果てた姿になっています。ヤギは何でも食べますが、やはり好みがあって自分の好きな植物から食べています。

東平のヤギは、ナガバキブシ、シマムラサキ、シマギョクシンカ、オガサワラモクレイシ、ムニンイヌツゲなどを好み、各種に食害が目立ちます。

 オオミトベラは、ここ数年急激に減少傾向にあります。
10年後はどうなっているのでしょうか、、、。
(2005年7月11日:父島・東平)
 ヤギは、人間の移住とともに食料や家畜として人間に連れてこられた動物です。ヤギが悪いわけではないのですが、どうにか小笠原本来の自然とのバランスをとってやらないと、固有植物はいとも簡単に絶滅の一途をたどっていきます。在来の植物を守らなければ、そこに生息する在来の動物(アカガシラカラスバトをはじめとする鳥類や昆虫類)にもいずれ影響を及ぼす事になるでしょう。

 一方、同じ仲間のシロトベラやコバノトベラは、ほとんど食害がありません。シロトベラは3〜5m程の高木になることで、コバノトベラは他の矮低木林林に守られているのでしょう。オオミトベラは、ヤギの通りやすい乾性低木林の林内で、しかも樹高が低いことが災いしているようです。

〜父島絶滅種:オオハマギキョウ、ユズリハワダン、トヨシマアザミ、シマクモキリソウ、ムニンキヌラン
当時、ヤギの食害で絶滅したという調査結果はないものの、すべてがヤギの好物である。〜

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