ウチダシクロキ激減!

 もっと明るい話題を伝えたいのですが、暗いニュースを伝えなければならなくなりました。ウチダシクロキの減少、、、もはや激減です。

 ウチダシクロキは父島に生育する絶滅危惧種で、全個体25株程しかありません。これは、野生株のムニンノボタンより少ない。
しかもほとんどが老木で、若い木がわずかしかなく、ヤギの食害があるところではまさに絶滅に瀕しています。干ばつにも弱い。(→ウチダシクロキ図鑑へ

近年は、毎年2個体ずつ程度減少をしています。
2005年9月9日:ウチダシクロキ
 今年は5〜6月の梅雨には多く雨が降り、夏も多少なりとスコールがありました。土壌の深いところでは十分の雨量でした。

しかし、すでにウチダシクロキはヤギの食害で大きなダメージを受けて夏を迎えていました。岩石地の厳しい乾燥に耐えられるか気になって水をかけに行きましたが、作業を一人で行うには労力にも時間的にも限界がありました。

9月14日現時点においては数えて6株が枯れました。他、4株がとても危険な状態です。
2005年9月14日:ナガバキブシ
 9月、岩石地は草本類も乾ききっている。イワザンショウやシラゲテンノウメ、シマムロも元気がありません。 時折吹く風は、確かに秋に近づいているような涼やかさがあるものの、10時から13時くらいの時間帯、日によっては山の林内でもうだるような暑さです。調査で丘の上部へいくと、ナガバキブシ・オガサワラモクレイシなどが葉が垂れていました。つらそうです。
ナガバキブシ・オオミトベラは、無残なヤギ食害、追いうちをかけるように乾燥もあいまって枯死個体が目立ちました。凄まじい減少、、、ガックリ肩を落としました。
 小笠原固有種は、動物にしろ植物にしろ外来生物に極端に弱い。

アカガシラカラスバトも警戒心が薄く、人間の目の前を通る。警戒心の薄さから、ノネコの捕食が懸念されている。オガサワラゼミは外来種のアノールに食べられ激減している。
ウチダシクロキをはじめ絶滅危惧種も、外来種のアカギみたいに切っても切っても枯れないくらいだったらどんなに心強いだろう。

何度水をあげにいっても、枯れていく植物を見守っていかなければならない。
なんと自分は無力だろう・・・。
オガサワラゼミを捕食するアノールトカゲ(9月14日)

 残念ながら、現在の絶滅危惧種の対策は、個体数がほんのわずかになってからか、花が綺麗で盗掘が懸念されないと問題視されない。気がつけばいつの間にか絶滅しているか、自然交配ができない状態になってから人工授粉し増殖して植栽するのですが、これには多くの労力と時間とお金を費やさなければならない。

しかし、本来保全というものは、まだ自力での更新が可能な時にこそ大切に守るべきではないか。
絶滅危惧種の個体数は、実際のところ環境の変化(外来種の影響)で時として急激に減少していく。
目立たない植物からか、ウチダシクロキは30株未満になっても長いこと放って置かれてきたが、植物が自力で個体群を維持していくのに30株は決して多くはない。今は10株が目前になっている。「まだあるから大丈夫。」とか「捜せば別の個体群があるだろう。」と安堵するのは大変危険なのです。

現在、「種の保存法」に種名が入らなかっただけで、ウチダシクロキには何の対策も行われていない。

製氷海岸に飛び込んで魚たちと泳いで、夕日に染まる海にプカリと浮いてみた。
増加するヤギの対策、絶滅危惧種の保全・保護対策もまだまだ不完全としか言いようがないが、諦めるわけにはいかない。一人でも多くの人に絶滅危惧種の現状について知ってもらう事がひとつ、協力者を探すのがひとつ。それから水をかけ続けること。協力してもらえるか植物に携わってきた先輩方にも相談しなければならない。私にできる事から続けていこう。

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