コウモリ媒花?!オガサワラオオコウモリとタコヅル

タコヅルの雄花と食べ痕 オガサワラオオコウモリのペレット
 6、7月は小笠原固有種のタコノキやタコヅルの花が咲く時期です。
タコノキタコヅルは、雌雄異株(しゆういしゅ:雌花が咲く雌株と雄花が咲く雄株に分かれている植物)です。
タコノキは公園や都道沿いにも植えられていて観察しやすい植物であるとともに、果実は一年を通してオガサワラオオコウモリの重要な餌になっているオガサワラオオコウモリとの関係が深い植物です。
タコヅルは、都道沿いや開けた山間などで花が咲いています。
花は雌雄に分かれていると書きましたが、雌花と雄花に集まる動物で一体何が受粉をしているのか、、、まだはっきりとは分かっていません。

今日は、タコヅルの雄花を見ました。1株に見えるだけで5つ程の雄花が咲いていました。
しかし、よく見るとみんな様子が変です。

何かの動物に食べられていました。あたりに破片が散らばっています。
食べられたのは雄花自体ではなく、花を包んでいた黄色い花びらのように重なった部分(苞でしょうか)でした。
見るからにおいしそうな苞です。
苞はパイナップルのような鮮やかな黄色で、トウモロコシの実ような甘い香りがしました。
雄花は3本の穂状花序をだし、まるでアイスキャンディのような形にびっしりと雄しべと花粉が付いています。
雄しべを触ると、クリーム色の細かい粉のような花粉がすぐに手に付きました。
花序の中心部分にも苞が重なってあった様です。
タコヅルにきた謎の動物は、一番柔らかいところが好きなのでしょう。
中心部分は念入りに奥の方まで頭を突っ込んで食べているようでした。

苞を食べたのは、オガサワラオオコウモリかなネズミかな、、、そう考えながら辺りを見ると、すぐ下にペレットが落ちていることに気がつきました。
この付近にもオガサワラオオコウモリがいることは知っていましたが、こんな小さなギャップ(森林の中に木が枯れたりしてできた開けた空間)でもタコヅルの花に気づくものなのかと驚きました。

ペレットは、オガサワラオオコウモリが植物を口に入れてから液体の部分を吸い取ってから吐き出したもので、2〜2.5cm程のかたまりです。崩してみると細かな繊維質が特徴で、タコヅルのペレットは触るともろく崩れました。
オガサワラオオコウモリはその場で食べてすぐにペレットを落とすので、これがあるとオガサワラオオコウモリがいたという証明にもなるのです。ペレット状態は新しくまだ少し湿っていました。昨夜か今朝来たばかりなのでしょう。

 これを見たとき、花の形態と動物との関わりについて観察と研究をされている田中肇さんの本に載っていたタコヅルの花序を抱くオガサワラオオコウモリの絵と文章を思い出していました。
目の前の状況に、ふと自分の目の前にオガサワラオオコウモリが苞を食べている様子や頭や体に花粉が付いている様子がリアルに見えるような気分がしました。著書の中に書かれていた田中肇さんの話通りだった。どうも過去の文献にタコヅルの花にオガサワラオオコウモリが来ることが載っているらしい。
雌花にもきてうまく受粉をしているのだろうか、、、雌花も見てみたくなりました。

〜 タコヅルの他にも、山を歩いているとタコノキやアデクモドキやヒメフトモモの果実を食べた跡(ペレット)が落ちていることがあります。植物ばかりではなく下も見てみると、そこは新しい発見にあふれています。小笠原ならではの自然を感じるひと時です。 〜

【参考文献】
花と昆虫、不思議なだましあい発見記 (講談社) 田中肇・文 正者章子・絵

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